桐生(伊原剛志)の手によるバチスタ手術ケース27は、単なる医療ミスではなく、何者かの意図的な介在により、術死が起こった可能性がある。
その白鳥(仲村トオル)の指摘に驚きを隠せない桐生。
ちょうどそのとき手術室では、執刀医である垣谷(鶴見辰吾)の手により、予定された切除範囲が切り取られ、病理医である鳴海(宮川大輔)が検査に入るところだった。
白鳥に手術のできを問われた桐生は
「ここまでは完璧だ。」
と述べた。事実、垣谷の執刀医としての腕は桐生の期待を裏切るものではなかった。緊張こそしているものの、常に冷静な垣谷は大きなミスをすることもなく、手術を進めていた。
完璧だという言葉を聞いて、田口(伊藤淳史)がノートパソコンを取り出した。桐生に対して見て欲しいものがあると言いながら。
ノートパソコンのモニターに映されていたのは、ケース27の術野の映像だった。それはまさに今、ケース35での手術の進行状況と全く同じ状態、つまり切除が終わって縫合を待っている状態だった。
白鳥はその画像を見ながら、自分が気になり、田口もそれに気づいた「異変」について語り始めた。
ターニケット。
それはバチスタ手術などにおいて、心臓の裏側にメスを入れるために、心臓をつり上げながら回転させる道具であった。
全てのバチスタ手術において、ターニケットを使い、心臓の切除範囲が術野の正面に向くように調整され、その状態で執刀医はメスをふるうのだ。
そのターニケットの長さを白鳥が指摘した。
現在行われているケース35のモニターには、黄色いターニケットの先端がごくわずか見える程度。それに比べて田口の持っているノートパソコンのモニターに映し出されたケース27のターニケットは明らかに見えている部分が長かった。
それは、心臓が必要以上につり上げられていることを表していた。ターニケットでつり上げられるということは、つまり心臓が執刀医から見て手前に回転しすぎているということ。
通常であれば、血管の位置関係からターニケットが引かれすぎていることは執刀医が気づくべきだったが、桐生は視野狭窄により、患部の違う部分が表に出ていることに気づかなかった。
なぜ必要以上につり上げられたのか。
その白鳥の疑問に、様々な要因が重なって慌ただしかった手術室内で起こったミスだろう、と桐生が言った。
「それが、もしミスでなかったとしたら」
田口が桐生に語り始めた。
その6へ続く。
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