バチスタ手術ケース27において、ターニケットの引きすぎという事実が判明したのに驚いた桐生(伊原剛志)に、田口(伊藤淳史)は続けて質問をした。
「桐生先生は、10年前どちらにおられましたか?」
その質問を聞いていた黒崎教授(榎本孝明)は「もうやめろ」と田口に対して制した。
「やはり黒崎教授も知っておられたんですね。」
田口はそう言うと、しかし桐生へ続けた。桐生が当時在籍していたのは、アメリカのサザンクロス病院だった。
当時の桐生は外科医としての腕を買われ、渡米している間だけでも2000を超える手術をこなしてきた。
その中に、日本人の心臓移植があった。
大静脈吻合法による心臓移植手術。
その患者である少女の名前は「EMI KAKITANI」。垣谷先生(鶴見辰吾)の娘だったのだ。
ドナーが急遽見つかるという緊急手術だったが、移植手術は成功した。しかし数日後、拒絶反応により、垣谷先生の娘は死亡した。
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そんな一件があってから10年近くが経ったある日、垣谷の所属する病院にやってきたのが桐生だったのだ。
桐生はアメリカに行かずとも日本での高度な心臓手術が行えるチームを作るべく日本に帰国し、そのバチスタチームの一員として垣谷を選出したのだった。
ことのいきさつを知っていた黒崎教授は垣谷がチームのメンバーになるのをとめた。もちろん、どんな一流の医師がやってもうまくいかない手術はある。垣谷自身も、自分の娘に行われた手術は完璧だったことを医師として理解していた。
垣谷の娘が亡くなったのは、手術の結果とは無関係な、拒絶反応による仕方のないものだったのだから。
しかし頭で理解していることと、気持ちとは別だ。黒崎教授はそのことを心配して、あえて因縁のある桐生が率いるチームに参加するべきではないと説得した。
しかし、垣谷は思っていた。
「あのとき、日本にバチスタチームがあれば娘は死なずにすんだかも。」
その思いから、黒崎がとめるのも聞かず、チームバチスタのメンバーになったのだった。
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チームに入ってみると、やはり桐生の外科医としての腕は間違いのないものだった。自分の娘の死は、やはり不可抗力だったのだ。垣谷はその思いを確信に変えて、チームバチスタのメンバーとして、桐生のサポートに徹していた。
しかしある手術で、桐生のメスが、術野を確保するための器具に何度かぶつかった。取るに足りないことだが、日本でも有数の外科医である桐生のその行動に、垣谷の中に疑念がわいてきた。
桐生先生は目が悪いのではないか?
桐生の目が悪かったとすれば、それはいつからなのか。最近になって悪くなったのか、それとも以前から悪かったのか。
ひょっとして、自分の娘を手術したときには、既に桐生は目にトラブルをかかえていたのではないか。
だとしたら、やはり自分の娘の死は、桐生の目が悪いせいだったのではないか。
垣谷の疑念はとどまるところを知らなかった。
そして訪れたバチスタ手術ケース27。
この手術は緊急オペとなった上に、普段は桐生の目の代わりをつとめていた鳴海(宮川大輔)が交通渋滞に巻き込まれていた。
鳴海先生なしで桐生先生はどこまでやれるのか。
それを試す絶好の機会が訪れた。
慌ただしく手術準備を行う一同の目が、心臓から離れた一瞬、ほんの空白の3秒間を利用して、垣谷はターニケットを引き上げた。
しかし、ちょうど視野狭窄に陥っていた桐生はその行為に気づかなかった。
そのまま手術を進め、間違った部分を切除する桐生を、悲しい目で見つめながら、垣谷は助手として手術に立ち会っていた。決して成功するはずのない手術に。
その7へ続く。
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